全米2大映画館グループの「AMC」と「Loews」が合併
6月21日(米国時間)、シネコン経営グループとしては全米2位のAMC Entertainmentと第3位のLoews Cineplex Entertainmentが合併を発表し、業界第1位のRegal Entertainment Groupに対抗していくことを発表しました。AMCとLoewsは両社合わせて全米30州と世界13ヶ国に計5900スクリーンをカバーしており、ライバルのRegalの6200に対抗できるレベルになったとコメントしています。
一見して攻めの姿勢に思える発表ですが、その実は業界の生き残りをかけた苦肉の策という感じです。映画館事業は近年の入場者数で大きなダメージを受けており、Loewsに至っては、2001年に倒産回避のために100拠点の閉鎖を行っています。またAMCとLoewsの最大のライバルはRegalではなく、実はDVDレンタル店の利用の広まりにあるというのが業界共通の認識となっています。新作公開から数ヶ月~半年ほど待てばDVDがレンタルショップに並ぶのですから、どんどん値上がりを続ける映画館に足を運ばずに、ちょっと待ってからレンタルしたほうが安上がりです。これは映画館にとっては死活問題で、今回の合併もリストラ等による経営効率化で、少しでも利益を稼ごうという意思の表れでしょう。
意味のキノコは何ですか
また別の興味深い話題もあります。Star WarsシリーズでおなじみのGeorge Lucas監督が6月25日(米国時間)、同氏率いるLucas Filmの新スタジオのお披露目会を、サンフランシスコにある同スタジオ内で行いました。その際のコメントで、現在の映画業界は減少を続けており、人々の関心はTV放送やDVDなどの新メディアに流れ、今後はStar Warsに代表されるような多大な制作費を投入した大作映画を作るのは難しくなる、と指摘しています。
業界を引っ張ってきた人のコメントだけに、説得力があります。実際、2大シネコングループ合併とLucas氏のコメントという2つの発表は、先行きを危ぶむ業界関係者のアクションという点でリンクしています。映画は映画館収入だけでなく、DVD化やTVでの放送権料、PC向けやCATVなどでのビデオ・オン・デマンド(VoD)配信での収入、メディアミックス等による関連グッズでの副収入など、ありとあらゆる展開を想定した総合売上をにらまなければ、特に大作映画などにおいて制作費を回収することが難しくなりました。またあるいは、TVドラマのように低予算/シリーズ化で手堅く稼いだり、TV放送向け映画の製作など、従来の映画製作とは違った手法をとるのも手かもしれません。
シルバートップ
ここだけIT関連の話になりますが、ADSLやFTTHなどのIPネットワークを経由したビデオ配信サービスが一般的になると、映画至上主義ではなく、より低予算で製作できるVoD配信向けの専用コンテンツが、大きな市場を築くことになるのかもしれません。サンフランシスコに設立されたLucas氏の新スタジオはデジタル編集をメインとした作業場として機能することになりますが、大作映画よりはこうした市場をある程度にらんでの展開を考えているような気がします。
サンフランシスコの新スタジオ「LDAC」
というわけで、噂の新スタジオ「LDAC(Letterman Digital Arts Center)」です。25日のお披露目式のニュースは世界に配信されていますので、実際にその様子を見た方も多いと思います。翌週の28日から一般公開が開始され、だれでもスタジオ見学ができるようになりました。とはいっても、スタジオ内部までは入れませんので、LDACの敷地にある公園と受付、そして建物に併設されているカフェが利用できる程度ですが……
LDACの詳細レポートは、こちらで一緒に仕事をさせていただいている山下さんが記事を書いていますので、そちらを参照していただくほうがいいと思います。ここでは、個人的な感想をちょっとだけ記載しておきます。
ここで、オオハシが住んでいるんだろう?
LDACがある場所は、Presidio Parkというサンフランシスコでも歴史的名所である国立(?)公園内にあります。元は病院などの敷地だったようですが、現在では海やゴールデンゲートブリッジを臨める見晴らしの良い素晴らしい広大な庭を備えた、複数の建物から構成されるキャンパスとなっています。場所的には、Exploretoriumというドーム状の神殿建築で有名な博物館の近くで、だれでも敷地に入れるオープンキャンパス形式をとっています。具体的には、Chesnut Streetをまっすぐ行ってPresidio Parkに突き当たった場所にありますので、車以外の手段で行くなら30番のバスを捕まえて終点付近まで移動し、あとは数分ほど歩くといいと思います。
新名所ということで喜んでいたのですが、実際に現地に行ってみたら……少々がっかりかなと。まだオープン直後で移転が進んでいないという理由もありますが、とにかく何もありません。景色自体は素晴らしいのですが、なにぶんLucas Film的なモノを期待してくると、完全に肩透かしを食らいます。LDACオープンに合わせて、同地に案内した日本からの来訪者には非常に申し訳ない思いでした。JavaOne参加で渡米していた彼らですが、行くまでは喜んでいたのですけど……。特に一番お世話になってるYさんには「浅井さんたちのナパ・ツアーに同行したほうがよかったなー」とかボソっと言われてしまいました(汗)
ですので、もしLDACを訪問してみたいという方は過剰な期待をせず、ゴールデンゲートブリッジやマリーナへの散歩のついでに訪れてみるのがいいでしょう。移転が完了して2~3年もすればにぎやかになる可能性もありますので、将来的には本当に名所になるかもしれません。
サンフランシスコ周辺にはCG制作会社が多数あり、実はハリウッドに負けず劣らず映画産業が盛んなところなのです。サンフランシスコ北部のマリン・カウンティは、あのPixarや、LDACとは別のLucas Filmの拠点が存在することで知られています。CGアニメ映画ではPixarと双璧を成すDreamWorks関連のCGスタジオも、シリコンバレー周辺に散在しているようです。隠れた映画の都「サンフランシスコ」を堪能したい方は、ぜひ時間を作ってキャンパス見学ツアーなどを体験してみてください。
――次回「ベイエリアの休日」に続きます。
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