(サバイバルのための火薬知識)
火薬や爆薬。
これらの言葉に対してイメージするものは、
「火をつけたら、バチバチ・ドッカーン」
などと、轟音をあげて爆発・炎上する...というシーンを思い浮かべます。
確かに火薬は、使い方によってはハデな爆発をしますし、産業用では、その威力を利用して建物や岩を崩したりもします。
まして、凄惨な戦場においては人殺しの道具にもなっているでしょう。
さて、今回の記事「生き残るための火薬」は、そんなハデな状況より一歩退き、私たちの生活において、いつ、何時、直面する「危機」を回避するために役立つ火薬アイテムと製造ノウハウを紹介するものです。
火薬類取締法では、理化学実験であれば(譲渡や販売はダメ)、製造400g・消費5Kg・信号使用30gまで、免許が不要です。
また、災害時における緊急使用においては、ほとんど無制限です。
しかし、今回の記事を参考にして、あなたが実験した場合におけるトラブルや事故には、あなたが一切の責任を負うことになりますので、くれぐれも注意してください。
(キャンプに便利〜固形燃料着火剤〜)
黒色火薬は、最も原始的な火薬で、簡単に作れます。
昔は火薬・爆薬の主流でしたが、現在では、ダイナマイトやカーリット爆薬の方が優秀なため、産業用として黒色火薬が使われる事は少なくなってきました。
現在、黒色火薬の用途の主なものは、猟銃の発射薬、導火線の心薬ですが、身近なところでは、自動車用発煙筒の芯薬や爆竹・花火です。
そして、なお最近、需要が伸びてきたものに「固形燃料の着火剤」があります。
キャンプに行って、固形燃料を使う場合、なかなか火がつかなくてイライラすることが多いものですが、最近の固形燃料には、袋詰めの着火剤(黒色火薬など)が付いてくるようになりました。
これを固形燃料にふりかけて点火すると、簡単に着火し、たいへん便利です。
さらに、これにマグネシウムなどを混ぜて持っておけば、水でぬれた たき木にも着火可能ですし、場所をあらわす信号灯にもなりますから、災害時や遭難時に強力な味方になります。
ここでは、「燃料着火用の黒色火薬の研究」として、作り方を解説します。
【用意するもの】
試薬類(価格は1994石津カタログより)
硝酸カリウム Potassium Nitrate 99 % 500g
(034-5413 ¥ 650)
硫黄(粉末) Sulfur, powder 99.5% 500g
(054-5493 ¥ 500)
※試薬類の購入方法については別記しています燃焼物
黒炭(普通の燃料炭)(DIY店やアウトドア店 ¥300〜)
または小麦粉(スーパーマーケットなど ¥200〜)
道具
薬の空ビン または 写真フィルムのパトローネ (フィルムケース)
小さじ...3本
割り箸...1本
漏斗(ロート)...1個
【作り方(6g分)】
@粉末にした炭 こさじ1杯(小麦粉ならこさじ半分)を容器(パトローネなど)に入れます。
A硫黄こさじ2杯を加え、@と混ざるように、割り箸で粒子をつぶしながら混ぜます。
B最後に、硝酸カリウムこさじ3杯を加え、静かによくかき混ぜれば出来上がりです。
【使用方法】
固形燃料にふりかけ、火をつけた新聞紙かマッチなどで着火します。
そう、すべてのTF 25 25
雨天時には、さらに少量のマグネシウムを準備し、ふりかけると、着火力は劇的に向上します。
【ミニ知識】
1.着火用として ひと工夫...
キャンプなどで、燃料着火用にする場合は、これに燃料用アルコールこさじ2杯を加え、よく練り合わせた後に、フィルムのパトローネなどに入れて、密閉保存しておきます。
1ヶ月ほど、冷蔵庫に入れてねかせておくと、成分の一部が硝酸エステルになり、発火性・燃焼性ともに、格段に向上します。
2.シュボッ と燃やしたい時は...
バラした爆竹の火薬のように、「シュボッ!」となってほしい時には、ゆっくり圧力をかけて固める・硝酸エステル類を混ぜる・金属塩類を混入するなど、化学的には多くの方法が考えられます。しかし最も原始的で簡単な方法として、炭塵(石炭の粉末)を、固形燃料粉の代わりに使うとよいでしょう。アルミの粉末を入れて 軽く固めてもよい効果が得られます。
石炭は、NTTタウンページ「コークス」の項目で、販売店を探す事ができます。
3.戦後の混乱時には...
戦後まもない頃、子供たちは、肥料用の硝酸カリウム(硝石)・硫黄・鶏糞を1:1:1に混ぜて、打ち上げ花火にしていました。
鶏糞を混ぜると、火薬の燃焼速度が上がり、威力も倍増するそうです。
4.これを使ってパイプ爆弾
筆者は この黒色火薬に アルミニウム10%を混入し、合計2gとして、10mlプラスチック試薬ビンに密封して、電気着火試験をしたことがあります。 が、その威力のすさまじいこと!
たかだか2gですが、防爆用に囲っていたコンクリートブロックを倒すほどの爆圧を持っています。黒色火薬でも、密封着火するなら、5gもあれば、密閉した6畳室内のガラスを吹き飛ばすことが可能です。また 10gもあれば クルマの窓ガラスをすべて破壊し、乗車している人を即死させるほどの殺傷能力を持つでしょう。
それほど 火薬の「密封破裂」は 危険です。金属パイプに詰めて、ネジブタをする「パイプ爆弾」もその例です。
まったく シャレにならない パワーを持ちますから、絶対に密封破裂はしないでください。
(信号燈)
基本的な火薬の作り方をマスターしたところで、その応用として「信号燈」を作ってみましょう。
「信号燈」と聞いて『なにそれ?』と思う方は、自動車用発煙筒も「信号燈」だと聞けばわかるでしょう。
燃えかたも原理も、花火とまったく同じですが、とにかく長時間、明るく燃焼させることによって、危険を知らせたり、救助を求めたりするのが信号燈の役割ですので、薬量も大きさも 家庭用花火より ずっと大きくなります。
雪山での遭難や、海難事故・交通事故など用途は多様で、作っておけば イザという時これほど便利で災害時に役立つものはありません。
この作り方を読めば、市販品と同じ本格的な信号燈を、市販品の1/10以下の予算で作る事ができます。
【用意するもの】
試薬類
硝酸カリウム Potassium Nitrate 500g ¥ 650
ロジン(松脂)500g ¥800 または 黒炭
ほか、炎色反応用金属
道具
新聞紙をまるめて(直径2cm)作った、紙筒
水道管(直径25mm)
混ぜるための容器...1個
漏斗(ロート)...1個
精密はかり(1g単位)...1器
【作り方(20g分)】3〜10分の燃焼
@粉末にしたロジンまたは炭を 6g 容器に入れます。
A炎色反応用金属を4gを加え、@とよく混ざるようにかきまぜながら混ぜます。
B最後に、硝酸カリウム10gを加え、静かによくかき混ぜれば、燃焼薬の出来上がりです。
グリースのバグは何ですか?
C新聞紙を細く(直径約2cm)丸め、片方に脱脂綿かティッシュペーパーを、固く詰めます。
D短く切った水道管にCを入れ、水道管を「握り部分」とします。
E Bでできた燃焼薬をCに入れ、新聞紙の先端をねじって閉じれば完成です。
F燃焼時間の調整は、ロジンや炭の量で調節します。
また、より完成品に近づけたければAの段階で3gの「洗濯のり」を追加して混ぜ、Eの段階で乾燥させます。
【使用方法】
先端の ねじって閉じた部分をマッチなどで着火します。
【炎色反応一覧表】
色 該当金属 よく使われる薬品
紅 ストロンチウム 炭酸ストロンチウム 500g ¥1,500
赤 リチウム 塩化リチウム 25g ¥ 600
橙 カルシウム 炭酸カルシウム 500g ¥ 500
黄 ナトリウム 硝酸ナトリウム 500g ¥ 650
緑 バリウム 硝酸バリウム 500g ¥ 850
青緑 銅 酸化銅(粉末) 500g ¥1,800
紫 カリウム 塩化カリウム 500g ¥ 600
※価格は目安です
【ミニ知識】
1.雪山遭難、空からの声
自衛隊の特別救難隊や、警察ヘリ・消防ヘリにとって、山中で遭難した人たちにはどうしてほしいのでしょう。
警察ヘリのパイロットによると「捜索する側は、動く物体に乗っていることを、まず理解してほしい。そのためには、遭難者が10m間隔で二人、発火信号筒を左右に振ってくれると、発見しやすいだけでなく、位置や状況、遭難者までのおおまかな距離までもわかる」とのことでした。
パイロットは日常の飛行で、2個以上の燈火に馴れているからなのだそうです。
空港の標識灯を見れば、その声もなんとなく うなずけますね。
また、コミュータ機のパイロットは「夜間飛行中、いつもはない場所に 動く明かりがあれば、5マイル(約9Km)離れていても、視野に入れば 変だぞ! と気が付く」そうです。
希望を捨ててはいけませんね。
2.海上遭難、救難隊員の声
フェリーの沈没や、航空機の海面着水で、漂流せざるをえなくなったら....
海上衝突予防法・第37条では、遭難した時、助けてほしかったら運輸省の定める信号を行わなければならない事が、明記されてあります。その内容の通り、海上保安庁の保安官も「発火信号の場合は、オレンジ色や赤色の燈火を上下左右に振ってほしい。」と言っています。しかし「昼間の発火信号は、あまり役にたたないから、ムダ弾を使わないように」とも...。
なお、昼間は信号燈火より、シーマーカー(アクリル塗料など)を使った方が救助されやすいそうです。
(硝安油剤爆薬)
そこらへんのDIY(ホームセンター)にあるもので、簡単にできてしまう爆薬があります。
俗に肥料爆弾、正式名称「硝安油剤爆薬」(ANFO爆薬)というものがそれです。
硝酸アンモニウム94%・軽油6%を混ぜ合わせて作る方法が基本です。
この爆薬は、時としてダイナマイトより強力な破壊力を持つにもかかわらず、摩擦や衝撃に強く、安全な爆薬とされています。火をつけても爆発しませんし、本物の電気雷管を使っても なかなか爆発しません。ダイナマイトなど、爆薬そのものを起爆雷管として使用し(導爆ブースター)、誘爆させるのが普通です。
どうしても 導爆ブースターが調達できない場合は、過激な団体の「圧力鍋爆弾」のように、密閉した圧力容器にめいっぱい詰め、優秀な300g黒色アルミ火薬パイプ爆弾を信管に使用することになるでしょう。
どのようにバイオ信号が生成されます。
また、もうひとつの特徴として、固形化した後の、爆薬形状を変える事により、爆発の指向性を得る事が可能です。容器に入れて固める際、中心に空缶などで 深く窪みをつくり、その反対側で起爆させると、窪みの向いた方向に向かって衝撃波が進みます。
なんで こんな話をするか。
実は 地震や山火事などで、まわりが火の海になりそうな状況なら、小麦粉や鉄粉(鉄片ではない)を大型ポリバケツにつめ、その中心で硝安油剤爆薬を破裂させると、まわりの酸素を奪い 消火させられるという話があります。
また 大型ポリバケツ数本に1%中性洗剤水溶液をつめ、その中心で硝安油剤爆薬を破裂させると、エアロゾル消火爆弾となり、これまた 消火させられるという話もあります。
詳しくは 筆者も 知らないため、予備知識として 知っておいて損はないでしょう。
硝安(20kg) 硝酸17.2% アンモニア17.2% 住友化学 (各地のJAで販売 平均¥1620 配達料込み)
(本記事の注意事項)
定められた量の範囲であれば、火薬を自製することは許可されています。
しかし、作る際、使用する際に、以下の事を厳守しなければ法律で罰せられます。
しかも、この法律を守らなければ、自分の生命が危険です。
最低限度、以下の事は守ってください。
1.火気厳禁です。
試薬を調合し、火薬を作るのですから、これを製造する部屋やその近くで火気を扱う事は大変危険です。
特に黒色火薬は、摩擦や衝撃で着火することも多いのですから、慎重に扱います。
これを守らないと、軽犯罪法(第1条の10)により罰せられますので、火気には充分に注意してください。
2.消火剤を準備すること
万一、事故によって発火した場合に備え、消火器を手近に準備すると安心です。
簡易消火剤としては、食塩1Kgに炭酸ナトリウム100gを混ぜれば、粉でも水に溶かしても、消火に効果があります。
この他には、酒店で売っている炭酸水(缶入りが便利)を火に向けて振れば、炭酸ガスと共に、二酸化炭素を大量に含んだ水が噴き出ます。これは大変、効果的です。(コーラでもよいが、ついつい飲んでしまう)
筆者は、出来上がった火薬が入ったガラス容器のまわりを、炭酸水の入った缶で囲むように保存しています。
万一、保管中に爆発しても、周囲の炭酸水が破裂し、自動的に消火されるからです。
火薬事故による火災は、刑法(第117条等)により、厳しく罰せられます。
3.火薬を持ち歩いたり、他人に譲渡してはならない
作った火薬を、必要も無いのに みだりに持ち歩く事は、軽犯罪法(第1条の10)により罰せられます。
また、火薬単体を所持したままでは、鉄道営業法などにより、公共交通機関を使用することができない場合があります。だからといって、バレないようにバックなどに詰めると、それだけで犯罪です。
火薬の入った容器には、火薬が入っている事を表記し、さらにそれを梱包する容器にも、火薬が入っている事を明記しなければなりません。(火薬類取締法第38条火薬類の梱包等の禁止)
また、研究用に作った火薬は、他人に譲ったり販売することはできません。(火薬類取締法第21条など)
4.火薬を犯罪に使用すると厳罰
刑法に「激発物破裂(第117条)」の罪、というのがあります。
これは火薬など爆発性のある物を爆発させ、人や財産に危害を加えたり、危険な状態に陥れたりすると、放火などと同じ罪になる、と決めた条文です。
また、これと同じような法律に「爆発物取締罰則」というのがあります。
これの第1条では、治安を妨げたり人や財産に危害を加えたりすることを目的として、爆発物を使用したら、死刑を含む厳しい罰を与えることが定められています。
しかし、この法律でいう「爆発物」は、特定の定義がなされていないため、火薬に限らずガソリンやアルコール、果ては水素まで、気化して酸素と混ぜれば燃焼するものすべてが当てはまります。
恐ろしいのは、この法律の第6条に「挙証責任」という条項があり、ここにはとんでもないことが書かれてあります。現代文風に書くと、
「爆発物を製造・輸入・所持または注文した者は、(治安を妨げたり人や財産に危害を加えたりする)犯罪の目的でないことを証明できなければならない。もし証明できなければ、その時は6ヶ月以上5年以下の懲役に処す」
この法律は、明治時代にできた法律ですが、平成の現在でも、まだ生きている法律だそうです。
普通、犯罪とは警察および検察が 犯罪を立証しなければ、容疑者が犯罪者として罰せられる事はありません。しかし、この法律は「警察や検察が犯罪を立証しなくても、容疑者が犯罪を起さない事を立証できなければ、犯罪者として罰せられる」と解釈するしかありません。
さらに、「燃焼」と「爆発」の定義すらなされていないので、「爆竹」も たき火で「パチパチ」と音がしても、「爆発」と解釈されてしまう可能性があります。
一方、火薬そのものを規定および規制する法律のひとつが「火薬類取締法」です。
この法律は、「火薬類」の定義を「推進的爆発の用に供せられる火薬」、「爆薬類」の定義を「破壊的爆発の用に供せられる爆薬」と定めており、これらを製造・使用する人は、免許や許可申請が必要としています。
しかし、医療用の液体酸素やニトログリセリン(心臓病薬)、工業用のピクリン酸(金属劣化測定)も、使い方が違うだけで、火薬・爆薬に該当することになります。
そうなると、たいへん面倒なことになるため、この法律では、理化学上の研究や、医学上必用であれば、定められた数量内で、火薬類・爆薬類を製造・使用してもかまわないことになっています。
今回の記事は、こういった 法律的背景の中で 明かされているものだと考えてください。
さて、自分で作った火薬を燃焼させた場合、どちらの法律に該当するのでしょう。
今回の記事を書くにあたって、弁護士や各都道府県の商工(火薬)担当者の方々に、意見をいただきましたが、ほぼ9割の方が「火薬類取締法の範疇に該当し、同時にこの法律で守られる」と回答されました。
(残りの1割の方は、「わからない」とのことでした)
そして火薬に関する団体のある方は「各法律は非常にあいまいであるが、燃焼速度が50m/s以下であれば、少なくとも爆燃や爆轟にはあたらない」とし、「たとえ爆発であっても、自分の部屋や土地で安全に行い、爆発音が他人に迷惑でなければかまわない」とのことでした。
しかし、屋外での実験は「公園は市町村の所有だし、河原や海岸すら建設省の所有である事が多い。こういった公共の場所で、爆発実験などを行うと、地面や施設を傷つけるかもしれない。その場合は、刑法の激発物破裂となるだろう」というのが、多くの方々の見解でもあります。
よって、黒色火薬でも、固くかためたり、密閉容器(金属パイプなど)に入れて点火すると、ほとんどが爆発エネルギーとなり、非常に危険です。
まして、他人に危害を加える事(悪意がなくても)や、音で驚かせる事は、どう見ても刑法犯罪ですから絶対にしないでください。
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